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発表要旨
多くの動物は「群れ」生活をしている。19世紀の博物学者は,その群れの集団生活の中に「社会」の存在を見出した。そこには「相互扶助」による共同体が想定されていた。しかしこの群れ社会のリアリティが明らかになったのはつい最近のことである。動物社会の「利他行動」や「ヘルパー」といった相互扶助の基底には個体間の強い競争と抑圧があった。この一方で,単独生活をする動物も少なくない。このような動物には「社会」があるのか。あるとすればどのような形で存在するのだろうか。社会とは,個体の集合様式ではなく,個体間相互の関係様式である。社会を導く動物たちの行動・生態学的な背景を議論してみたい。それはおそらく人間社会へもつながっている。