本研究プロジェクト活動である研究会を「講演会」として公開とするものです。講師のMartí氏とGuarné氏は、本プロジェクトの共同研究者でもあり、本講演会では現在までの研究成果報告として、祭り・祝祭に関する新たな視点を提示してもらいます。ここでは国際的な交流も充実させながら、祭り・祝祭研究の深化を狙っています。
講師 Lecturers
発表要旨 Abstract
Blai GUARNÉ
専門:文化人類学、文化ナショナリズム研究
バルセロナ自治大学翻訳・通訳学部・准教授
Universitat Autònoma de Barcelona
Associate Professor
講演要旨 Abstract
“Festa and Matsuri: Community Celebration and Japanese Public Visibility in Barcelona Today”
(フェスタと祭り: 現在のバルセロナにおける日本人による祭りと彼らの顕在化)
スペイン・カタルーニャの日本人コミュニティは、スペインで最も大きなものであるが、従来、日本の大企業から派遣された社員とその家族という、時限付きの住人として特徴づけられてきた。その為、カタルーニャの社会に根付くこともなく、彼らは自分たちで全てを賄う(日々の買い物、教育、レクリエーション、住宅など)ようなコミュニティを形成していて、ほとんど地域の公共場面の表に現れるようなこともなかった。しかし、日本企業が生産コストのより低い場所を求めて移転したことにより、カタルーニャにおける日本社会の在り方が大きく変わった。この10年間で、日本企業から派遣されてくる人々とは異なる住民が現れてきたのだ。すなわち彼らは、それまでとは異なる環境に身を置き、自身の文化資本を活用することで人生をやり直そうとする日本人であり、人生そのものや芸術活動、あるいは知的活動において、何かを成し遂げる計画に導かれてバルセロナに辿り着いた日本人である。ここに新しい現象、つまり、バルセロナ在住の日本人の顕在化が顕著になっているという近年の現象がみとめられる。それはバルセロナが、文化的にも社会的にも多様な都市として認識される過程と軌を一にした現象であった。
本講演では、2000年代末から始まり、今では人々に知られ、多くの人々が参加する「バルセロナ祭り(Matsuri Barcelona)」の分析を通じて、バルセロナ在住の日本人の顕在化、という新しい現象を考察する。そして、現在のカタルーニャの社会において、この祭りが、政治的、文化的、表象的に浸透し、接合する様態を分析する。
Josep MARTÍ
専門:文化人類学、ポスト人間主義研究、音楽人類学
スペイン国立高等社会科学研究所・常任研究員
Institució Milà i Fontanals-CISC
Researcher
講演要旨 Abstract
“Festivals and Atmospheres”(祭りと「雰囲気」)
私たちは皆祭りを祝うが、概念としての「祭り」、そして分析的な視点からの「祭り」は定義が簡単ではない。本講演ではまず、「祭り」という概念について簡単に説明し、祭りとは何かを理解するために必要不可欠な要素を構成するもの、つまり、「雰囲気」に着目する。「雰囲気」は、近年、文化人類学的研究にとって非常に有用であることから進展してきた概念であり、ポスト人間主義的な仮説から生まれた新しい理論的枠組みにとって、有益な例となる。特に、その理論的視点は事象の本質を明らかにすることに関連するので、祭りにみられる非表象的性質をもつ概念や事柄、たとえば、感情(affection)や集合(assembbly)といった側面を考察の対象にできる。
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次回の公開研究会(講演会)は、2023年1月24日(火)を予定しております。お知らせは、早稲田大学人間総合研究センターHPにて掲載します。